本文へ移動

自然薯と長芋の違い

このページの執筆・監修者

政田自然農園株式会社代表取締役社長 政田健太郎 自然薯の畑にて撮影
政田自然農園株式会社 代表取締役社長 政田健太郎
自然薯の栽培方法を確立した政田自然農園3代目。
2005年の入社以来、20年以上自然薯の栽培、種芋生産、収穫、選別、出荷、販売まで、自然薯に関する実務全般に携わっています。
 本ページは、政田自然農園での栽培経験と、全国の生産者・産地への対応で得た知見をもとに執筆・監修しています。 


自然薯と長芋の違い
政田自然農園のすりおろした自然薯

 スーパーなどで見かける「長芋」と「自然薯」。どちらもすりおろして「とろろ」として食べるため、同じもの、あるいは自然薯が長芋の一種だと思われていることがあります。しかし、自然薯と長芋は植物学上、別の植物です。

政田自然農園は、長年にわたり自然薯の種芋生産、栽培技術の研究、栽培資材の開発、全国の生産者への栽培指導に携わってきました。自然薯という作物が正しく理解され、これからも栽培されていくために、まず自然薯と長芋の違いを知っていただきたいと考えています。


自然薯と長芋は「別の種」
政田自然農園のカットされた自然薯

自然薯の植物名はヤマノイモ、学名は Dioscorea japonica です。

一方、一般に長芋と呼ばれるものはナガイモ、学名は Dioscorea polystachya です。

どちらもヤマノイモ科ヤマノイモ属に属しますが、植物学上は別の「種」に分類されています。文部科学省の日本食品標準成分表でも、

「じねんじょ」と「ながいも」は別の食品として掲載されています。



自然薯
長芋
植物名
Dioscorea japonica
Dioscorea polystachya
科・属
ヤマノイモ科ヤマノイモ属
ヤマノイモ科ヤマノイモ属
日本での位置づけ
古くから山野に自生
主に栽培作物として普及
食感
粘りが非常に強く濃厚
水分が多く比較的さらりとしている
染色体
40
140

自然薯と長芋の栄養成分の違い

成分(可食部100g・生)
自然薯
長芋
エネルギー
118kcal
64kcal
水分
68.8g
82.6g
炭水化物
26.7g
13.9g
でん粉
22.7g
11.8g
たんぱく質
2.8g
2.2g
脂質
0.7g
0.3g
食物繊維
2.0g
1.0g
ビタミンB1
0.11mg
0.10mg
パントテン酸
0.67mg
0.61mg
ビタミンC
15mg
6mg
カリウム
550mg
430mg
ビタミンE(α-トコフェロール)
4.1mg
0.2mg

出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」注 近年の分析例では、澱粉を初め一部の成分について、長芋と比較して三倍近い含有量を示す自然薯の個体も確認されています。


自然薯は日本の山野に古くから自生し、長い間食用として親しまれてきました。一方の長芋は、日本には古い時代に渡来し、長い栽培の歴史の中で様々な品種が生まれたと考えられています。長芋の日本への伝来時期については諸説あります。



自然薯は栽培しても自然薯です
自然薯の圃場 山口県柳井市

自然薯は、栽培しても自然薯です

「自然薯」という名前から、

山に自然に生えているもの=自然薯
 畑で作ったもの=長芋

と思われることがあります。

これは正しくありません。

自然薯か長芋かを決めるのは、生えている場所ではなく植物そのものの種類です。

畑で栽培されたものであっても、ヤマノイモ(Dioscorea japonica)であれば自然薯です。文部科学省の資料でも自然薯について「栽培品もある」と明記されています。逆に、山野に生えているからという理由だけで、すべてを自然薯と判断することもできません。栽培地から逸出したナガイモなどが野生化することもあります。




粘りと食味にも大きな違いがあります
自然薯の葉っぱの写真

ここが、自然薯との違いをさらに分かりにくくしているところです。

ナガイモ Dioscorea polystachya の栽培品種は、日本では一般に形などによって、

ナガイモ群・イチョウイモ群・ツクネイモ群に分けられています。

つまり、細長い一般的な「長芋」だけがナガイモの仲間なのではありません。

地域によって「大和芋」「つくね芋」などさまざまな名称で呼ばれるものもあり、名称だけから植物学的な種類を判断することが難しい場合があります。このような呼び方の違いも、「自然薯」「山芋」「長芋」が混同される原因の一つです。


葉を見ると違いがわかります

自然薯とナガイモは、芋だけでなく地上部にも違いがあります。

自然薯の葉は比較的細長いハート形で、葉の付け根付近は通常緑色系です。

ナガイモでは葉の幅が広いものが多く、葉柄と葉身の接続部分などに赤紫色を帯びる特徴が見られるものがあります。国立科学博物館も、ナガイモでは茎や葉柄が紫色を帯びることなどをヤマノイモとの識別点として紹介しています。

ただし、葉の形には系統や生育環境による変異があります。葉の形だけで一律に断定するのではなく、複数の特徴から判断することが大切です。


自然薯の葉っぱの写真 優良系統
当園優良系自然薯①
染色体40
自然薯の葉っぱの写真 優良系統
当園優良系統自然薯②
染色体40
自生する自然薯の葉っぱの写真 
明治神宮境内自然薯
採取不可の為染色体未検査
長芋の葉っぱの写真
長芋
 染色体140
自然薯と長芋の中間種 の写真
自然薯と長芋の中間種 
染色体70~80

自然薯を正しく知ってもらうために
各地で自然薯の講演をする政田健太郎代表

自然薯と長芋は、どちらも食用として優れたヤマノイモの仲間です。

長芋には長芋の良さがあり、自然薯には自然薯ならではの強い粘り、風味、そして長い食文化があります。私たちは、長芋と比較して自然薯の方が優れていると言いたいわけではありません。違う植物である以上、それぞれを正しく区別して伝えていくことが大切だと考えています。

政田自然農園は、自然薯の安定栽培技術の確立、種芋の生産、栽培資材の開発、そして全国の生産者への栽培指導を通じて、長年にわたり自然薯栽培の普及に取り組んできました。

栽培技術だけが広がっても、自然薯そのものについての知識が正しく伝わらなければ、本当の意味で自然薯が普及したとはいえません。

自然薯とはどのような植物なのか。
長芋とは何が違うのか。
どのような種を選び、どのように栽培するのか。

生産する人、販売する人、そして食べる人まで、自然薯についての正しい知識が広がっていくこと。それが自然薯という作物の価値を守り、次の世代へつないでいくことにつながると、私たちは考えています。政田自然農園は、自然薯栽培の普及に携わってきた農園として、これからも栽培技術の研究と、正確な情報の発信を続けていきます。

TOPへ戻る